戯言

戯言です

どうして期

保育園に入園した女の子は知的好奇心の盛りで、不思議に思ったことは何でも母親に聞く。
たまに回答に困ることもあるが、それよりも子供ならではの着眼点に驚きつつ、質問を楽しんでいた。

「どうしてお花はいろんな色をしているの?」
「どうして車は早く走るの?」
「どうしてゾウさんは耳が大きいの?」
「どうしてママの作るごはんは美味しいの?」
こんなに可愛い質問はどうして思い浮かぶのだろう。母親は頬を緩めた。

 

「どうしてパパはママがいないと女の人を連れてくるの?」
「どうしてママはあの人よりかわいくないの?」
「どうして私はママよりあの人の方が好きなのにたまにしか会えないの?」
母親はコンビニに行き、妊娠が発覚した時以来5年ぶりに紫煙を燻らせた。
すれ違う人が振り向くほど、顔は酷く歪んでいた。

 

「どうしてママはそんな高いところにいるの?」
「どうしてぶらぶら動いてるの?」
「どうして何も話さないの?」
母親は、二度と口を開くことはなかった。