連鎖
少女は、男子バスケットボール部のキャプテンが好きだ。
少しでも近づきたくてマネジャーを始めた。
背が高く、バスケットボールが上手い。顔に少しニキビがあるが、そんなところも好きだ。
いつでも楽しい話をして笑わせてくれる。
バスケットボール部のキャプテンは、同じマンションに住む女子大生が好きだ。
詳しい年齢は分からないが、たまにエレベーターで会って挨拶をすると胸が高まった。
夜は女子大生がエレベーターを降りた後に残る香水の香りを思い出すだけでエレクトしてしまった。
女子大生は、ホストが好きだ。
化粧品やブランド品を買いすぎて、気付くと少額の借金を抱えてしまっていた。
仕方なしに始めたピンサロのアルバイトは、すぐに借金を返せるくらい稼げて余裕が出たので、一度だけと思いホストクラブに行った。
巧みな話術と恋人であるかのような接客は、本気の恋になるまで時間はかからなかった。
ホストは母親が好きだ。
小学校2年生の頃に離婚し、女手一つで育ててくれた母親は自分の全てを犠牲にしても守りたいと思っている。
母親に楽をさせるために、夜はホストで働き、昼間はビル清掃や工事現場で毎日休みなく働いていた。
疲れても、母親の笑顔を見るとまた明日も頑張ろうと思えた。
母親は宗教に嵌っていた。
離婚の原因も、宗教に嵌り使途不明金が嵩んだことが夫に知られたからだった。
全ての苦しみから救ってくれた教祖は唯一の信じられる存在だった。
お布施を増やせば増やすほど心身ともに幸福が訪れるような気がしたので、収める金額は増えていった。
教祖は逃げていた。
詐欺罪容疑で逮捕状が出ていた。
何故逮捕されるのか理解できなかった。ただ、信者を幸せにしているだけのつもりだった。
教祖は逃げた。捕まりたくなかった。
夜も眠らずに人気のない場所を探し求めて逃げた。
教祖は逃走の4ヶ月後に信濃川の下流で遺体となって見つかった。